
3.4 ノルウェー理工大学生物実験所
海洋生物資源の持続的な生産と利用の可能性を追究することを目的として、1996年から5年計画で開始されたMARICULT (MARIne COLTivation ; 海洋肥沃化実験)の事務局で中心的な役割を果たしているOlsen教授とVadstein博士、このプログラムの計画策定に関係したSakshaug教授などと面談してその概要をうかがった。 MARICULT(5年間の予算総額はおよそ16億円の規模)は、貧栄養で生産効率が低い外洋域や開放性の沿岸海域の栄養塩濃度を人工的に増加させて、天然の沿岸湧昇海域に匹敵する程度に基礎生産のレベルを上げ、さらにそれを海洋生物資源の生産とつないでいくことによって、将来の持続的な食料供給と炭酸ガスの海洋への吸収による温暖化の防止に貢献することをめざすもので(図11)、まずそのための基礎的な実験・調査が開始されている(付録3参照)。人工的な栄養供給の方法としては、主として施肥による栄養添加が考えられている。栄養添加によって赤潮発生など環境への悪影響を生じることのないよう、添加する栄養塩の量や組成、添加のタイミングや頻度などの生態系や生物生産への影響を中心に研究が進められている。 MARICULTは、栄養添加の海洋食物網(海洋における生物の捕食―被食関係の網目状の構造)に対する影響を調べることを目的とする研究グループと、将来のエネルギー資源として海藻の生産を目的とするグループに大きく分かれる。主要な研究課題の構成は以下の通りである。 サブプログラム1:海洋食物網 (1) 微小藻類に対する栄養供給(組成、頻度、量など)の影響 (2) 海洋生態系における栄養階層間の相互作用、物質やエネルギーの流れ (3) 栄養添加により生物生産を増加させるための方法、その可能性と限界 (4) 栄養添加の環境への影響 サブプログラム2:海藻類 (1) 藻類の代謝生理 (2) 生物機能を利用した浄化 (3) 海藻生物量の化学物質やエネルギーへの転換 まずサブプログラム1の(1)、(2)、(4)を中心として1996年から研究が開始されており、サブプログラム1の(3)とサブプログラム2は1997年から開始の予定になっている。 MARICULTはまた、ノルウェー国内のプログラムの他にEUが支援する国際プログラムも統合された包括的な性格を持っている。EU支援のプログラムで1996年に3年計画で開
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